最近よく耳にする、「シェアサロン」ってご存じですか? 美容系サロンや料理教室、物販販売などの店舗を持たないオーナーに、場所を提供する施設のことです。
2021年11月、千葉県成田市のシェアサロン、Olive House様からのご依頼で、サロンの一部の空間演出を手掛けさせていただきました。
コンセプトは「好きを仕事にする人の、なりたい自分を叶える場所」。アロマセラピー、ネイル、エステ、料理など、“好き” を実現できる仕事の第一歩を踏み出す場所として、またそんな仲間を応援したり、好きなサービスを堪能したりもできる場所♪ キャスト側としてもゲスト側としても楽しみ尽くせる、コミュニティ型シェアサロンです。
二人のお子様を持つ笑顔が素敵な女性オーナーは、家庭でのセルフケアをお伝えするホームケア講座を主宰。11月22日にリニューアルオープンした心地よさと華やかさを演出した空間では、オープン当初からイベントやワークショップが開催され、たくさんのお客様で賑わっています。訪れたみなさんから「わぁ、素敵な空間!」との第一声をいただいているようです。
今月は、こちらのシェアサロンの空間演出術の実例をご紹介します。
Monthly Theme 1月
植物に囲まれた心地よい空間 笑顔が集まるシェアサロンの空間演出術
ゲストを迎える空間のシンボルは 「フライングリース」
初めて現地調査で訪れた時、コーラル色の南欧風の建物がとても素敵だったので、てっきりオーナーのご自宅かと思ったのですが、聞けば歯科開業医だったお父様が医院として建てた3階建てとのこと。アットホームな雰囲気のおしゃれな歯科医院の名残がありました。
今回改装を担当したのは、玄関を入ってすぐのゲストをお迎えする空間。
待合室だった1階の多角形の空間です。大切に受け継がれたアンティークの家具や絵画などの調度品が置かれていました。
家庭でのセルフケアをお伝えするホームケア講座を行うほか、エッセンシャルオイルなどのアロマ製品やクリエイター作品の展示スペースとしても活用したい、ご両親から受け継がれた六角形のアンティークテーブルを囲んでワークショップを行い、その後はゆっくりとくつろげるティールームに……それがオーナーのご要望でした。
空間コンセプトは、「ナチュラルな空間に彩られた、居心地の良い空間」と決め、初めにデザインしたのは、第一印象が決まるスペースのディスプレイ。
アンティークのテーブル上に、大きなリースを空中に吊り下げる「フライングリース」をご提案しました。
リースの輪の形は、終わりも始まりもない「永遠性」のシンボル。家族の歴史を刻む建物や調度品を引き継ぎ、次世代の女性を応援していくビジネスの場として、永遠性をイメージする中で浮かんだデザインでした。
フラワー装飾は、フラワーアレンジャーの本間るみ子さんに依頼。約1mあるこのリースは、シェアサロンのシンボルとしても一役買っています。入り口からの見え方と、テーブルに着席して見上げた時の見え方が違い、部屋のどの角度から見ても美しく見えるように作られています。
オープン時はクリスマスだったので、星やタッセルのオーナメントをデコレーションしていました。
「Olive House」を訪れたキャストやゲストの皆様が、SNSにこのフライングリースと笑顔の写真をたくさん投稿してくださっています。
もとの空間を活かした、 立体的な展示スペース
アンティークのテーブルとチェア、壁面には重厚感のあるカップボード。これらを活かし、ドライフラワーやアーティフィシャルグリーン(造花)の植物アレンジメントで柔らかい印象をプラス。スモークツリーのモーヴピンクやグリーンリーフが、フライングリースと共鳴し合い、空間に立体感が出て奥行きや高さが強調され、お客様の目線を集めます。
カップボードには、スキンケアやバスボディ商品を展示。背景のミラーにより商品が強調されます。小さなフラワーアレンジメントを添えて、自宅でのホームケアの時間に優雅さを感じてもらえる演出を。
テーブル奥には、クリエイター作品の展示スペースがあります。ここはなんと、レントゲン室だったのです。扉が外されて何もない空間でしたが、ぴったりサイズの什器を配置して、商品展示スペースにしました。
什器選びのポイントはガラス棚。上からの照明を遮らないように、全てガラス棚にしました。壁面と同じ白いフレームの什器なので、商品が際立って見える効果があります。
こだわりの手作り什器と ディスプレイ展示
メイン商品であるエッセンシャルオイル。たくさんの種類の小さな瓶があります。種類がわかりやすいうえ、手に取りやすく戻しやすい陳列にするには、商品のサイズに合わせた展示台が必要になります。長く使うことも考え、商品に合わせて設計した什器を、木工作家の鈴木美紀さんにハンドメイドで作っていただきました。
エッセンシャルオイルの展示什器は2種類製作しました。30本のオイルを展示する3段の雛壇什器には、イメージに合わせた白いテーブルもご用意して明るい窓下に設置。円形什器は、ワークショップなどでセレクトした商品を紹介するためのもの。ガラスのつまみがポイントで、木製の支柱と3枚の天板は取り外してコンパクトになる設計です。
オイルをディスプレイ展示するために壁面に設置したのは、チェスボードがデザインされたシェルフです。オイルと一緒に本物の小さなチェスも並べて、遊び心のあるディスプレイに。お揃いのテーブル什器もご提案して、プロモーション商品を飾れる場として活用することになりました。
壁面のシェルフ選びは、商品サイズに合わせ、お客様の動線を邪魔しないように奥行きを狭くしたのがポイントです。棚とフックも新設して、何もなかった壁面を展示スペースとして有効活用。シェルフの両サイドにはスワッグを飾り、壁面全体をディスプレイスペースとしてデザインしました。
ディスプレイは、心地よさや華やかさを演出することで、ゆっくりとくつろいでもらえる「時」を作ります。明るい気持ちになる「気分」を作り、会話を弾ませます。お客様の目線を誘導して、商品を触りやすく買いやすい、「売れる」展示を作ることもできます。オーナー様のお気に入りのディスプレイをお客様に伝えることで、おもてなしの「気持ち」を伝えることもできます。
「前田さんのお仕事の範囲は、とても広いんですね!」とよくお客様から言われますが、空間そのものにたくさんの価値とストーリーを作り出すことが、私の仕事。空間演出の全てに全力を注いで関わらせていただくのが、仕事の醍醐味でもあります。
改装の設置は1日がかり。夕方ようやく完成した時、オーナーとスタッフの方がとても喜んでくださいました。オープン後、お客様がこの空間をとても気に入ってくれて、コンセプトの通りに笑顔が集まるシェアサロンになっていることをご報告いただいたのが、私にとっても嬉しい出来事でした。
Presentation tool
現地調査後、初めにお見せしたのは9ページのご提案書。当初は1階の空間装飾・インテリアスタイリング・什器制作についてのご提案でしたが、エントランスの植栽ディスプレイや看板制作などが追加となり、最終的には合計15枚の提案書になりました。お忙しいオーナーのために、同じ場所に全て2案ずつプランを作成し、比較して選んでいただけるようにしました。プレゼンテーションの一部をご紹介します。
Olive House 基本情報
住所:成田市囲護台1-10-7
JR成田駅西口より徒歩5分
京成成田駅東口より徒歩10分
駐車場あり
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